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K-レーションにもC-レーションにも、当たり前のようにタバコが入っていた。ところが現代のMRE(Meal, Ready-to-Eat)にタバコは入っていない。いつ、なぜ消えたのかを整理する。
① そもそもなぜ支給品に入っていたのか
アメリカ軍とタバコの結びつきは第一次世界大戦(1917年参戦)まで遡る。タバコ会社が前線の兵士に無償でタバコを配り始めたのがきっかけで、遠征軍司令官ジョン・パーシング将軍は「この戦争に勝つために何が必要かと聞かれれば、弾薬と同じくらいタバコだと答える。タバコは日々の糧食と同じくらい欠かせない」とまで述べている。この頃には、タバコは前線で通貨代わりに使われるほど生活に浸透していた。
第二次世界大戦でもこの構図は変わらず、タバコ会社は無償供給と支給品への採用を後押しし続けた。K-レーションには1食あたり4本入りの小袋(1日あたり計12本)、C-レーションには1食あたり9本が同梱されていたことは、当ブログのタバコ銘柄記事でも触れている。
② 健康被害の証拠が出ても、しばらく変わらなかった
1950年代には喫煙の健康被害を示すデータがすでに増え始めていたが、軍は特に対応を変えることなく支給を継続した。転機になったのは1964年1月11日、アメリカ公衆衛生局長官(Surgeon General)ルーサー・テリー博士が発表した報告書。喫煙が肺がん・喉頭がんの原因であることを、政府として初めて公式に認めた文書だった。
とはいえ、この報告書が出てからもすぐに支給が止まったわけではない。実際に糧食からタバコが外れるまでには、さらに10年以上かかっている。
③ 廃止は1975年 ― ただし当時の正式名称は「C-レーション」ではない
国防総省がK-レーション・C-レーションからタバコを外したのは1975年。理由として、喫煙の健康リスクに関する科学的データと、部隊の即応性(readiness)への悪影響が挙げられている。
【要確認】廃止年について「1972年」とする資料も一部見られるが、複数の軍事史ソースが1975年説を採っており、本記事では1975年を採用した。
ここで一点、考証上おさえておきたい事実がある。「C-レーション」という正式名称自体は1958年に廃止されており、以後は「Meal, Combat, Individual(MCI)」という名称に変わっていた。つまり1975年にタバコが外された時点の正式な糧食名は「C-レーション」ではなく「MCI」。ただし中身も見た目もC-レーションとほぼ同じだったため、兵士たちは変わらず俗称として「C-ration」「チャーリー・ラッツ」と呼び続けていた。当ブログの他記事で「C-レーション」と表記している場合も、この俗称としての用法を踏襲している。
MCIの付属品パックに入っていた銘柄は、キャメル、チェスターフィールド、ケント、クール、ラッキーストライク、マールボロ、パルモール、セーラム、ウィンストンなど。WWII期のK/C-レーションから続く「ローテーションで色々な銘柄が入る」方式は、この時代まで変わらず続いていたことになる。
④ MRE移行より先に、タバコの方が先に消えていた
糧食そのものがMCIからMRE(Meal, Ready-to-Eat)に切り替わったのは1980〜81年。つまり「MREになったからタバコが消えた」わけではなく、糧食の世代交代より5〜6年早く、タバコだけが先に支給品リストから外れていたことになる。当ブログのMRE分解記事で扱っているフレームレスレーションヒーター(FRH)のような加熱機構は、タバコが消えた後の世代の話ということになる。
⑤ その後の流れ:軍全体での禁煙政策へ
レーションからの廃止は、その後長く続く軍の禁煙政策の出発点になった。
- 1978年:基地内に喫煙・禁煙エリアを区分する基本規則を導入
- 1985年:国防総省の調査で軍人の喫煙率47%(当時の一般市民は30%)、喫煙関連の医療費が年間2億ドル超と判明
- 1986年:国防長官キャスパー・ワインバーガーによる指令1010.10。新兵訓練期間中の喫煙禁止など、本格的な禁煙キャンペーンを開始
- 1994年:指令1010.15で屋内職場での喫煙を禁止、屋外指定エリア制へ
- 1997年:大統領令13058によって連邦施設内の喫煙が原則禁止に(国防総省は3年の猶予を経て2002年12月7日に完全施行)
1975年の糧食からの除外は、単発の措置ではなく、その後20年以上続く一連の禁煙政策の最初の一手だった、という位置づけで見るとわかりやすい。
出典
- Smoking in the United States military – Wikipedia
- Meal, Combat, Individual ration – Wikipedia
- A History of the Surgeon General’s Reports on Smoking and Health – CDC
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