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  • パップテントは実際くつろげたのか ― ブッシュクラフト人気の裏にある前線の現実

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    ※昨今のブッシュクラフト・キャンプブームで人気の「パップテント」について、実際のWWII当時の使われ方を整理する記事です。誤りがあればご指摘ください。

    渋いOD色のキャンバス地、三角形のシルエット――パップテント(シェルターハーフ)は、最近のブッシュクラフト系キャンプシーンでも人気の道具になっている。ただし、これが実際に前線で「くつろぐためのテント」として使われていたかというと、話は少し違ってくる。


    ① 名前の由来:南北戦争まで遡る

    「パップテント(pup tent、子犬用テント)」という呼び名は、実はWWIIが起源ではない。南北戦争の時代、北軍兵士に支給された小さなキャンバス製シェルターがあまりに小さく、「これは人間用というより子犬小屋みたいだ」と兵士たちが冗談で呼んだのが始まりとされる。おなじみのOD(オリーブドラブ)色になったのはWWIIからだが、コンセプト自体は南北戦争から続く伝統ある装備だった。


    ② 基本構造:2人で1張り

    シェルターハーフは約7フィート×5フィート(約210cm×150cm)のキャンバス地。兵士1人につき半分(シェルターハーフ)を1枚と、ポール1セットを携行し、2人分を組み合わせてボタンやスナップで繋ぎ、ポール・ロープ・ペグで一つのテントに仕立てる。1人分の装備重量は約5ポンド(約2.3kg)、2人テント一式で合計約10〜11ポンドほど。1人でも簡易的なリーンツー(片流れ式シェルター)として使うこともできた。


    ③ 「くつろげていたか」の実態:前線ではほぼ無理だった

    ここが今回の本題だ。設計上は「2人用の快適なテント」とされていたが、実際の前線ではそのようには使われていなかった

    敵の砲火にさらされる状況でテントを張るのは自殺行為に等しく、実戦中は事実上「テントとして使う」こと自体をやめていた。前線の兵士は、砲弾の破片から身を守るためにまずフォックスホール(塹壕・待避壕)を掘って身を隠す。シェルターハーフは、そのフォックスホールの上に雨よけとして被せる使い方の方が実態に近い。つまり「中でくつろぐ2人用テント」というよりは、「穴を掘った上に屋根をかける布」として使われることの方が多かった。

    実際に本来の意味での「テントとして張って中で休む」ことができたのは、前線から離れた後方エリアに下がっているときに限られる。今のブッシュクラフト系キャンプで見かける、パップテントの中でくつろぐ牧歌的な絵は、どちらかというと後方の休息時の姿に近く、前線の実態とは切り離して考えたほうが良さそうだ。


    ④ 今もブッシュクラフト界隈で人気

    ちなみにこのシェルターハーフ、今でもブッシュクラフト・サバイバル系のコミュニティで根強い人気がある。頑丈なヴィンテージキャンバス地が何十年経っても使えることが評価されているようだ。米軍での現役期間も長く、1980年代に、より近代的なテントシステムに置き換わるまで、歩兵の標準装備であり続けた


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  • パップテントで実際に何をしていたか ― 手紙とギャンブル、月3億ドルの賭け

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    前回の記事で、パップテントが実際にテントとして機能していたのは後方エリアに限られる、と分かった。今回はその後方での実際の過ごし方を深堀りする。誤りがあればご指摘ください。

    前線から離れた後方で、実際にパップテントが張られていたとき、兵士たちは中で何をしていたのか。派手な出来事ではなく、退屈しのぎと日常の延長だったというのが実態に近い。


    ① 手紙を書く:最も定番の過ごし方

    国立WWII博物館のアーカイブには、ヨーロッパ戦域(ETO)の兵士が、パップテントの中で休みながら手紙を書いている写真記録が残っている。実際、当時の資料でも「手紙を書くことは、兵士の好むレジャー活動のリストで最上位に挙げられていた」とされる。故郷からの手紙・故郷への手紙は、士気を保つ最大の要素の一つだった。


    ② トランプ・サイコロ賭博:規模が桁違い

    ここが今回一番の発見だった。兵士の暇つぶしとして最も定番だったのがカードやサイコロを使った賭博で、その規模は想像以上だ。

    • 一番人気のゲームはクラップス(サイコロ賭博)。ポーカー・ブリッジ・ピノクルも定番だった
    • トランプは赤十字が慰問品として無料配布しており、クリスマス用の特別版まで作られていた
    • 兵士たちの賭け金の規模は、月間3億ドルにものぼったとされる
    • YANK誌(兵士向け雑誌)のギャンブル専門家ジョン・スカーンが確率表を計算し、200万部印刷して配布。兵士たちはこれをヘルメットの中に貼り付けて持ち歩いていたという

    軍上層部もこれを黙認、あるいは容認する場合もあったとされる。何もすることがない状況で兵士の気を紛らわせておく方が、規律違反や不満が募るよりましだ、という判断だったようだ。

    考証メモ:確率表をヘルメットに貼っていた、というのは以前の黒ゴムバンドの記事で触れた「ヘルメットに色々挟んでいた」話とも繋がる、面白い接点。


    ③ 雑誌・新聞を読む、装備の手入れをする

    その他の定番の過ごし方としては、雑誌や新聞を読む銃や装備の手入れをする、といった地味だが実用的な作業が挙げられる。派手なレクリエーション(ダンスパーティーやUSO慰問ショーなど)は、テント生活よりもっと後方の基地でのものが中心で、パップテントでの過ごし方はもっと静かで個人的なものだったようだ。


    まとめ:劇的な場所ではなく、退屈しのぎの場所

    パップテントの中で行われていたのは、手紙を書く、カードで賭ける、装備を手入れする――どれも地味で個人的な、退屈をやり過ごすための行為だった。ブッシュクラフト系の今どきのキャンプで描かれる牧歌的なイメージとはまた違う、「することがない時間をどう埋めるか」という兵士のリアルな日常がここにある。


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